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ゲルマニウム BJT とトランジスタの構造メモ

自分は合金接合型のトランジスタのみで 6石中波ラジオを製作したことがあるもののこの世代の人ではないので、かなりデタラメを書いている可能性があるので注意してください。

なんとなくゲルマニウムだから高周波特性が悪いと考えていましたが、実際はほとんど構造に起因しています。シリコンの時代にはベースが拡散で作られるメサまたはプレーナが普及していましたので、シリコンで以前の構造のものをみる機会が少なかったということだと思います。寧ろ小信号的な高周波特性は同じ構造であればゲルマニウムの方が上なのだと思います。

ベース領域での濃度勾配に関して

初期のトランジスタの構造では、なにもしなければベース領域の不純物濃度は一定です。

バイポーラトランジスタでは、キャリアがベースを通過するのに掛かるベース走行時間が高周波特性に重要な影響を与えますが、これが(点接触接合型と違い接合型では)純粋に拡散によるものであるため比較的遅いという特徴があります。同じベース幅の点接触トランジスタより随分遅いようです。そこに着目した H. Krömer が発表したのがエミッタ側のベース領域に指数関数状の濃度勾配を導入することで一定の電界を生成し、それによってより速いドリフトによりキャリア走行時間を減少させるというものでした。また、エミッタ側の高濃度の部分ではベース抵抗を減少させる効果が、残りの低濃度の部分ではコレクタ容量を減少させる効果があります。

不純物を拡散させてこの効果を取り入れたトランジスタでは、名称に拡散 (Diffused) やドリフト形とつけられたりします。後期のメサ形やプレーナ形ではそもそも拡散によってベースが作られるため特にドリフト形とわざわざ言うことはありません。

成長拡散形 / Grown Diffused

Grown Junction Structure

成長接合形 (Grown Junction) は接合型でもっと最初に作られたもので、ゲルマニウム結晶を成長させる過程で不純物を溶かしたりすることによって pn 接合を作り出すものです。トランジスタにするときには、ここから角棒状に切り出し、両端にエミッタとコレクタ端子を半田付けして、中央の薄いベース部分に注意深く配線します。このため模式図で見る pnp 接合の形そのものとなります。

ベース厚みの制御に限界があり、またベース配線を行う作業がとても精密であるのが欠点です。配線をベースと同じ不純物を加えておき、配線より薄いベース層に接触した時ベースのみとオーム接合し、周囲のエミッタやコレクタとは pn 接合となるようにするようですが、これだけでも精密さが想像できます。

日本では東通工 (ソニー) のトランジスタの多くがこの構造だったようですが、資料が入手できず掲載していません。

ここでは濃度勾配を持たせて周波数特性を改善したものから掲載しています。NEC の幾つかはスーパーグロンと書いてあり、また他社との比較表などでは Grown Diffused と表記されていて、成長拡散型と考えられます。

型番 用途 データ VCBOmax [V] ICmax [mA] fαb @1mA [MHz] Cob/Cre @6V [pF] PCmax [mW] 製造 価格例 (2020)
2SA153 SW MIX 1961 15 4 60 1.3 20 日電
2SA154 AM IF 1961 50 1.5
2SA155 55
2SA156
2SA157 SW OSC 1961 65 1.5
2SA159
2SA160
MW CONV 1961 55 1.5
2SA213 FM RF/MIX 1961 15 2 140 1.0 15 若¥213
2SA214 FM OSC/CONV
2SA215 FM IF (High gain) 120 佐¥198
2SA216 FM IF (Medium gain) 佐¥198

合金接合形 / Alloy Junction

Alloy Junction Structure

薄くしたゲルマニウムペレットの表裏から、コレクタ、エミッタとなる金属ドットを合金させることによって作るトランジスタです。成長形と比べてベースに配線する工程の困難さがないことは容易に想像がつきます。

おそらくゲルマニウムが使用された時代では最も普及した構造のものなのではないかと思います。ベース幅も厚く、特段工夫をしていなければ濃度勾配も無いので高周波特性は悪いのですが、有名な 6石ラジオを構成するための、中波帯の使用に耐えうる素子がたくさん存在し、大きなコレクタ容量を中和しながら中間周波数に使用されていました。

また、後の時代、シリコンのものが導入され始めたような時代になってもしばらくの間は価格が安かったのか、低周波大電流用途のみに合金接合型ゲルマニウムトランジスタが残っている例が見られます。

型番 用途 データ VCBOmax [V] ICmax [mA] fαb @1mA [MHz] Cob/Cre @6V [pF] rbb' [Ω] Cc⋅rbb' [ps] PCmax [mW] 製造 価格例 (2020)
2SA37 AM CONV 1962 18 5 7 11 85 935 25 東芝
2SA38 AM IF 1962 10 11 90 990
2SA51 AM RF 1962 18 5 14 11 95 1045 60
2S12 AM CONV 1958 16 7 12 80 960 20
2SA52 1962 1971 18 60
2SA49 AM 1st IF 1962 1971 18 9 11.5 85 978 60 若¥176
2S13 AM (2nd) IF 1958 16 4 12 70 840 20
2SA53 1962 1971 18 5 11 770 60 若¥176
2S14 AF 1958 25 50 25 50
2SB54 1962 1971 1 35 80
2S15 AFPA 1958 25 50 50
2SB55 1962 60 1 35 150
2SB56 25
2SB94 AF 1962 25 50 1 35 75
2SB200 AF 1962 32 400 0.5 225
2SA12 MW IF 1967 16 15 8 10 80 日立
2SA15 MW RF/CONV 1967 12 10
2SB75 AF 1967 25 100 2 ? 150
2SD75 1967 3
2SB77 AFPA 1967 2
2SD77 1967 3.5
2SB89 AFPA 1967 45 150 ? ? 250 若¥267
2SB156 AFPA 1967 16 300 ? ? 150 若¥176
2SB370 AFPA 1967 25 500 ? ? 200 若¥294
OC44
2SA44
2SA144
AM CONV/MIX/IF 1960 10 5 15 10.5 110 1155 82 Philips
松下
OC45
2SA55
2SA145
AM IF 1960 6 75 788
OC70
2SB70
2SB170
AF 1960 30 10 15 @0.5mA 1000 125
OC71
2SB71
2SB171
AF 1960 10 @3mA 500
OC72
2SB92
2SB172
AFPA 1960 32 50 0.35 @10mA 145
OC74
2SB174
AFPA 1960 20 300 1.5 @50mA 230
2SA201 AM CONV/IF 1971 15 15 8 14.5 60 100 三洋
2SA202 AM 1st IF 1971 12 7.5 - 12.5
2SA203 AM 2nd IF 1971 5 7.5 - 12.5 70
2SB22 AF 1971 25 200 1 75 300
2SD30 1971 max 200
2SB185 AF 1971 25 150 1 200 若¥160
2SB186 1971 若¥192
2SB187 1971 75 若¥213
2SD186 1971 120
2SD187 1971 125
2N591 AF 1966 32 40 0.7 50 RCA

合金接合ドリフト形 / Alloy Junction Drift-field

上の合金接合型に濃度勾配を持たせたもので、単にドリフト形と言われることもあるようです。

型番 用途 データ VCBOmax [V] ICmax [mA] fαb @1mA [MHz] Cob/Cre @6V [pF] rbb' [Ω] Cc⋅rbb' [ps] PCmax [mW] 製造 価格例 (2020)
2SA76 FM RF/MIX 1962 18 5 130 1.7 40 68 55 東芝
2SA77 FM OSC 1962 110
2SA92 SW RF 1962 18 5 50 2.0 40 80 60
2SA93 SW CONV/FM IF 1962 45 1.9 30 57 佐¥220
2SA433 FM IF, AM CONV/IF 1964 18 5 2.0 55
2SA468 SW OSC 1966 18 10 35 2.0 45 55
2SA469 SW MIX 1966 30 40 樫¥88
2SA470 SW CONV 1966 35 40 若¥235
2SA471 FM IF, MW CONV/IF 1966 35 30 若¥160
2SA472 MW RF/CONV/IF 1966 30 45 若¥235
2SA350 SW RF/OSC/CONV, FM IF 1967 20 10 45 2.5 80 日立 若¥211
2SA351 SW OSC/CONV 30 若¥294
2SA352 SW MIX 35 若¥294
2SA353 AM IF 1967 25 10 30 2.5 80 若¥211
2SA354 AM CONV 樫¥99
2SA355 AM RF 若¥211
2SA100 AM 1966 40 10 10 max 180 60 松下
MC101
2SA101
AM IF 1960 1966 ~8.6 1.7 30 51 若¥107
MC102
2SA102
AM RF/MIX/OSC, TV AIF 1960 1966 25 40 68 若¥128
MC103
2SA103
SW OSC/MIX/CONV 1960 35 50 85
MC104
2SA104
SW CONV, FM IF 1960 50
2SA219 FM IF, TV SIF 1971 20 15 55 3.5 35 70 三洋
2SA220 AM RF 1971 20 10 60 3.5 max 120 50
2SA221 SW CONV/OSC/MIX 1971 20 15 55 3.5 35 70 若¥299
2SA222 SW CONV 1971 60 若¥267
2SA223 SW OSC/MIX 1971 65 30
2SA285 MW CONV 1961 18 5 40 2 40 50 日電
2SA286 SW CONV/MIX 1961 50
2SA287 SW RF, FM IF 1961 60
2N1177 FM RF 1966 30 10 140 2 80 RCA
2N1178 FM OSC
2N1179 FM MIX
2N1180 FM/AM IF 100
2N1637 AM RF 1966 34 10 45 2 80
2N1638 AM IF 40
2N1639 AM CONV/MIX/OSC 45

メサ形 / Mesa

Mesa Junction Structure

ベースを、幅を精密に制御できる不純物の拡散によって構成するものです。現在一般的なプレーナ形とトランジスタ部分は構造が近いですが、ウエハ全体に拡散させた後エッチングによって台地(メサ)状のトランジスタ部分のみを残すことによって作られます。

そもそも拡散で作られるのでベースの濃度勾配は最初からついています。

ゲルマニウムの場合、ベースは電極を合金、または蒸着させることによって形成しますが、シリコンの場合はベース周辺だけさらに不純物を拡散させることによって作られるようです。

尚 NEC の 2SC30 系列のシリコントランジスタは、初期のものはメサ形で、三重拡散やエピタキシャルによるコレクタ特性の改善が行われていないもののようです。後期型 (エピタキシャルプレーナ) と比べるとコレクタ飽和特性で大きく違っていることがわかります。

型番 用途 データ VCBOmax [V] ICmax [mA] fT @1mA [MHz] Cob/Cre @6V [pF] rbb' [Ω] Cc⋅rbb' [ps] PCmax [mW] 製造 価格例 (2020)
OC170
2SA70
FM/SW OSC/MIX/IF/RF/CONV Philips 1960 1966 20 10 70 1.4 100 Philips
松下
2SA341 62.5 若¥267
OC171
2SA71
FM RF/OSC/MIX Philips 1960 1966 20 10 100 1.4 100
2SA342 62.5 若¥299
2SA239 FM RF 1962 1966 20 5 200 1.5 30 75 東芝 樫¥176
2SA240 FM CONV/MIX
2SA432 TV VHF RF 1964 20 5 0.3 40 70
2SA525 FM RF/CONV/OSC 1966 20 5 250 1.0 25 75
2SA233 FM IF, SW CONV 1967 20 10 100 2.1 80 日立 若¥329
2SA234 120
2SA235 FM RF/CONV 135
2SA435 VHF RF/MIX/OSC 1967 20 10 325 0.85 60 樫¥165
2SA436 VHF RF/MIX/OSC 1967 0.98
2SA437 0.92
2SA438 0.88
2SA440 VHF RF/MIX/OSC 1971 20 5 230 1.5 60 三洋
2SA403 100MHz RF/OSC/MIX 1963 15 5 180 1.5 75 日電
2SA404 TV VHF 260 1.2

プレーナ形 / Planar

メサ形と近いのですが、ベースの拡散をウエハ全体に行ってから不要部分をエッチングするのではなく、選択的に拡散させるということと、上面を酸化膜で保護することによって pn 接合が露出しない構造にしたというのが違いです。特に後者が取扱い上重要で、特性が改善されるだけではなく気密性のガラスや金属パッケージが必要でなくなり、安価な樹脂パッケージのトランジスタが登場することとなります。ゲルマニウムだと酸化膜が高温や水分に対して安定でないことから基本的にはシリコンに適用されるもののようです。